日本に対する重要質問事項への意見 障害者権利条約委員会へ 2019年8月1日
(2014年ロビーイング活動時の様子)
日本に対する重要質問事項への意見
精神障害者権利主張センター・絆
2019年7月26日
精神障害者権利主張センター・絆は精神障害者の全国ネットワークであり、2018年5月に全国「精神病」者集団という名称を変え精神障害者権利主張センター・絆となった。
全国「精神病」者集団は1974年に結成され、わたしたちは私たち自身の人権主張を継続してきた。会員は精神障害者のみであり、わたしたちの任務は私たち自身の声でわたしたちの人権主張を行うことである。
全国「精神病」者集団が結成されたとき、わたしたちは、人権団体や労働組合などと一緒に刑法保安処分の導入阻止闘争を始めた。また無実でありながら死刑判決を受けた、赤堀さんの支援も身体障害者団体とともに取り組んだ。赤堀さんは1989年に再審無罪を勝ち取った。
わたしたちは世界精神医療ユーザーサバイバーネットワーク(WNUSP)の会員組織であり、障害者権利条約の作成過程にも国際的にはWNUSPとともに参加した。山本眞理はWNUSPの理事の一人だ。
わたしたちの日常活動は少なくとも年6回のニュースの発行、月1回の交流会、地域におけるそしてまた強制入院における自らの権利主張の支援など。
連絡先
東京都中野区野方4-32-8-202 山田方絆社
メール nrk38816@nifty.com 窓口 山本眞理
日本の状況の概要
施設収容
日本は世界で一番精神病院の病床数が多くそしてたくさんの長期入院患者がいる。歴史的に政府は精神病院の病床数を以下2つの目的のために増やしてきた。
第一に 「危険な精神障害者」から社会を防衛するため
第二に 1960年代の高度経済成長のために、「精神疾患」の患者や他の障害者を介護する家族の重荷をへらし、家族を労働力化すること。
他の先進国が精神病床を減らしている中で、日本政府は1960年代に精神科病床を増やす政策をとった。
1960年に人口1000人あたりの病床数は1、1970年代なかばには2.5となり、2010年には2.7となった。一方OECD諸国の平均は0.7である。
1960年代に政府は私立精神病院の病床を増やすために様々な政策が取った。例えば、補助金であるとか低利の融資、医師と看護の定員基準を他の一般病院よりも低く設定するなどである。そして入院への保険報酬も他の一般病院の約3分の1とされた。
いまや精神病院病床の90%が私立病院にあり、私立精神病院の経営者は精神保健政策に非常に大きな影響を与えている
精神科病床は居住系施設として機能している
「OECD医療の質レビュー 日本 スタンダードの引き上げ 評価と提言
2014年11月5日」において日本の精神科病院状況は以下のように描かれている。
「日本では精神科の病床の多くが、長期入院の慢性患者に利用されており、他の OECD 加盟国では精神科病床のカテゴリーで報告されていない可能性があることに注意することが重要である。このような長期入院の病床を除外すると、日本の病床数と平均在院日数はOECD平均と近くなる。それでも、これらの長期入院の病床の多くは、元々は精神科の診断を受けている患者によって占められている。精神障害患者を入院させる歴史的に強い傾向の中、こうした長期入院の精神科病床の患者は、学習障害や知的障害及び認知症の患者とともに、入院していることも考えられる。
こうした患者は他の多くの OECD 加盟国では、『精神科』の長期入院病床や入院施設にさえ入れられていない。」
これは正しい指摘であり、昨年夏毎日新聞は半世紀以上入院している人が少なくとも1770人いるという記事を発表した。
「精神疾患 50年以上の入院1773人 全国調査」
毎日新聞2018年8月20日 21時00分(最終更新 8月21日 10時08分)
精神病床のある全国の病院で50年以上入院する精神疾患の患者数が、2017年6月末時点で少なくとも1773人に達することが毎日新聞の調査で判明した。半世紀にわたり継続入院している患者数について公的な統計は取られていない。
厚生労働省は患者の地域移行を掲げ削減を目指すが、今も病院に収容され人生の大半を過ごす人たちが数多くいる実態が明らかになった。
国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)が47都道府県・20政令市を通じ、民間を含め精神病床のある病院から毎年6月末時点の患者に関する情報提供を受けていることから、毎日新聞は各自治体に対し、センターに提出した資料を情報公開請求したほか、担当部署を取材。全国の精神病床を持つ病院の97・7%に相当する1588病院について、1967年6月以前に入院した患者の人数を確認した。
神奈川県は『病院との取り決めに反する』として入院年月を明らかにしておらず、同県内の病院については横浜、川崎、相模原の政令3市所管分に限って把握できたため、人数はさらに増える可能性がある。
長崎県では記録上1923年11月28日に入院した患者もいた。診断が明記されていた1246人のうち統合失調症が約8割を占めた。性別は1433人確認でき、内訳は女性が758人、男性が675人だった。
入院の形態が判明した1291人のうち、自らの意思による『任意入院』は811人。専門医の判断で家族らの同意を得て、本人の同意がなくても病院に入れる『医療保護入院』は476人、自分や他人を傷つける恐れのある患者を知事らの権限で強制入院させる『措置入院』は4人だった。
国立精神・神経医療研究センターは病院の現状を毎年調べており、17年は精神病床のある全国1625病院のうち1610病院から任意で情報提供を受けた。センターによると、入院患者は計28万4172人。入院期間が20年以上の患者については集計しており、2万5932人だった。【畠山哲郎、山崎征克】 」
しかし今に至っても政府はこの人権侵害を解決する有効な措置をなんらとっていない。毎年入院した人の12%が1年経っても入院中であるというのに、さらに政府は新規入院し1年経ったこの人たちの60%は「重度かつ慢性患者」であり精神病院に長期にわたり入院する必要があると主張している。
また安倍首相は誰一人介護離職させてはならないと宣言した。これは地域において適切かつ十分な支援を高齢者に提供するということを意味しない。そうではなく彼らを施設へとりわけ精神病院へ送ることを意味し、そしてまた2025年においてすら精神病院に長期療養する人のための病床としての「需要」が10万床あると宣言した。
したがって、日本においては多くの精神病院病床は居住系施設として機能しており、その一部は終末施設である。
日本では、緊縮政策により社会保障部門も含め、公務員定数は削減に次ぐ削減であり、いくつかの例では東京の自治体職員が生活保護利用者を東京から遥かに離れた精神病院や施設に組織的に送り込んでいる。そして彼らは自動的に長期入院患者となる。
私は「国連恣意的拘禁作業部会(WGAD)の来日調査を実現する委員会」が日本へのWGADの公式訪問を要請した手紙から以下引用する。この委員会はNGOであり、山本も一員であった。
「報徳会宇都宮病院(栃木県)は、1983年に、看護職員らの暴行により患者2名の死亡事件を引き起こした精神科病院です。
現行法上、精神障害者は、自らの意思により精神科病院に入院することができ(任意入院)、その者が病院に対して退院を申し出た場合には、病院は強制入院の手続を採らない限り、その者を退院させなければなりません(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律21条2項)。ところが、宇都宮病院は、精神障害者より退院の申出があっても、退院の申出を放置して、入院を継続していました。
しかも、その多くは閉鎖病棟で処遇されていました。結局、2011年から2015年までの間に、30名以上の精神障害者が自力で退院することができず、法律家の支援を得て退院を実現しました。
宇都宮病院の入院患者の半数は生活保護受給者で、身寄りのない者が多く含まれています。医療費は生活保護費から支払われるため、病院は、安定収入確保のために、医療上の必要性がないのに、精神障害者を長期入院させた疑いがあります。」
今現在でも弁護士は同じような例を東京で確認している。
わたしたちはWGADから、東京の強制入院2つについて恣意的という意見を得ているが、そのうちの一つの被害者Hさんは未だ後見人により精神病院に拘禁されている。そしてこれは決してまれな例ではない。
(2014年のロビーイング活動時の様子2)
以下、質問事項案(pdf版)質問事項案とその1頁目: