全国「精神病」者集団の歴史をたどるために 少しずつ古い文書をご紹介していこうと思います 山本眞理 (4) UPRプレセッション@国連ジュネーブ本部 参加報告  三輪佳子

全国「精神病」者集団の歴史をたどるために 少しずつ古い文書をご紹介していこうと思います  山本眞理

(4) UPRプレセッション@国連ジュネーブ本部 参加報告  三輪佳子

2017年10月10日~13日、国連ジュネーブ本部において、人権に関する普遍的定期的審査(UPR)のプレセッションが開催されました。主催元は、この審査のために設置されたNGOであるUPR Infoで、審査を行うのは国連に加盟している国々の政府です。国連が主催し、条約それぞれについて行う委員会審査とは異なり、複数の条約にかかわるその国の課題を包括的に取り扱うことが可能という特色があります。
このたびのプレセッションは、日本を含む13ヶ国に対する審査本番に先立って行われたもので、各国から5名のパネリストが登壇して行うパネルディスカッション形式でした。10月12日、日本の5団体からのパネリストの1人として、私も参加し、発表を行いました。また、発表の前後、6ヶ国に対してロビイングを行いました。

UPRプレセッションは火曜日~金曜日に開催されましたが、月曜日は朝から夕方までスタッフによるトレーニングが開催され、実質、1週間まるごと「UPRプレセッションウイーク」でした。トレーニングの内容は、UPRが創設された経緯や沿革・UPRの役割と実績・各国NGOに期待されている役割・ロビイングの方法・文書やプレゼンスライドの作成のコツ・口頭発表のコツ と多岐にわたり、極めて具体的でした。
火曜日には、UPRのスタッフとの打ち合わせがありました。「スライドの操作は自分でするのか、それとも誰かにしてもらうのか」といった具体的な事柄を打ち合わせながら、私が抱いていた不安はスタッフの方に聞き取られ、やりとりの中で解消され、さらにエンパワメントされました。その「人間力」に心から驚嘆し、かつ、ありがたく感じました。
発表の前後、国際障害同盟(IDA)のサポートのもと、イタリア・スペイン・オーストラリア・チリ・イギリス・ドイツの6ヶ国にロビイングを行うことができました。対応して下さったのは、大使館の外交官の方々です。どの方も、まず日本の現状に驚いておられました。そして同じように、精神科病院の病床数がなかなか減らず、入院日数も短くならないことの背景が何なのかに関心を持たれました。ある国の外交官は、限られた情報から全体像をはっきりさせるために、短時間のうちに的確な質問を繰り出されました。まるで、凄腕ジャーナリストの「プロの犯行」です。後で、同行してくださったIDAのスタッフに「ジャーナリストみたい」と感想を述べると、「彼女の前職はジャーナリスト」ということでした。
今回のUPRプレセッションおよびロビイングで訴えた日本の精神医療の問題は、拘束と保護室への収容が減少せずむしろ増加していること、日本の精神科入院患者が非常に多く世界の精神科入院患者の20%を占めること、精神科入院日数の平均が世界トップレベルの長期(約10ヶ月)であること、2025年にもなお10万人の社会的入院患者(現在の厚労省の呼称では「重度かつ慢性」の患者)が存在することを前提に組み立てられる地域移行、そして成年後見制度です。共通の背景は、入院しはじめるのは容易だけど退院は容易とは限らないシステムであり、患者の人権より優先される何かが常に存在しつづけている状況です。患者が地域にいないので、地域の理解も地域移行も進まず、このことが多数の入院患者と長期入院を維持する形になってしまっています。悪循環です。

6ヶ国の方々は、多様な形で「日本は、何が足りなくて、この悪循環を断ち切れないのか?」と聞いてくださいました。答えは明確です。地域生活に関する支援の充実であり、そのための費用です。精神科入院患者の全員にとって、退院して地域で暮らすことが魅力的な選択肢であり、しかも実際に選ぶことができるのであれば、地域移行は自動的に進むでしょう。
プレセッションでの発表は、各国政府から参加した25名程度の外交官たち、各国NGOの方々・傍聴者の方々含め約40~50名の前で行いました。
発表の冒頭で、私は2つの悲劇について話しました。千葉県の30代男性が保護室の中で看護師に暴力を振るわれ首を骨折して2014年に亡くなった事例、そして本年2017年5月、10日間の拘束のうちに深部静脈血栓症を発症して亡くなったニュージーランド国籍の20代男性英語教師の事例です。語り始めたとき、お2人の無念とご家族のお悲しみを思い、私は涙声になりそうでした。会場は「水を打ったように」という形容そのままに静まり、強い驚きと深い共感が寄せられていることを感じました。私は冷静に発表を進め、締めくくることができました。会場の驚きと共感は、発表の最後まで維持されたままでした。
フロアからは、日本の5人のパネルに対する質問はありませんでしたが、司会者から「日本政府に何を勧告してほしいですか」という質問がありました。私は「日本が、締結した国連障害者権利条約に違反しないこと」「日本政府の関心が精神科病棟の維持ではなく地域移行にあることを、地域生活支援への費用配分の形で示すこと」の2点を答えました。日本政府が精神科入院患者の地域移行を本当に重要だと考えているのなら、その考え方は、入院医療費の削減と、地域移行と地域での支援に予算が配分される形で示されるはずです。往年のドラマ『家なき子』の名セリフ「同情するなら金をくれ」ではありませんが。
用意した40部の資料は、私たちが会場を出る時には全部持ち帰られていました。サポートしてくれたIDAのスタッフは、この強い関心に大喜びしていました。またその日、日本国内および他国の方々30人程度から、「胸を打たれた」というご感想をいただきました。とにもかくにも、無事に役割を果たすことができてホッとしました
貴重な機会を与えて下さったUPR Infoの皆様、現地で細やかなサポートをして下さったIDAの皆様、私をこの貴重な場に送り出した全国「精神病」者集団の皆様、初めてのことで右も左も分からずにいた上に複数の締め切りを抱えていた私を的確なサポートとプッシュで成功に導いた山本眞理さん(全国「精神病」者集団)、そして費用のご支援をいただいた皆様に、心よりの感謝を申し上げます。
ありがとうございました。次の機会にも、どうぞよろしくお願いします。

 

当日のスピーチ、パワポ*1、および会場で配布した身体拘束で息子さんをなくされたニュージーランドのサベジさんのご家族の手紙の邦訳*2を全国「精神病」者集団サイトに掲載しました。インターネットお使いでない方には郵送します。窓口までお申し込みください。

*1  日本における精神障害者に対する人権侵害-20171012

*2  日本の精神病院での医療過誤による死亡の証拠-2017-年9-月20日-パトリック・サベジ-マーサ・サベジ

当日は当然日本政府も参加また9月28日に国連人権理事会で精神保健と人権の決議がなされ次に国連総会での決議という流れとなっている時非常にいいタイミングで精神障害者の問題が触れられてとても良かったと国際障害同盟のスタッフも言っております。そちらのサイトにも報告が載せられています。精神保健福祉法の改悪案の審議が来年になりそうですから、政府への厳しい勧告が出ることを期待しますが。受け入れるかどうかがまた難しいところではあります。山本